世界中からバイオグラフィーワーカーが集まる会議が、今年はスペインの古い城塞都市クエンカ郊外で開催された。その後の別の会議では街の中心部に泊まり、8日間同じ街に滞在した。8年前に訪れたスペインに再び来るとは思わなかったが、居心地の良いこの街の佇まいにしばらくいてもよいと思ったほどだ。前回も、同じように古い世界遺産の街を訪れた。中世に建てられた聖ヨハネ騎士団の教会は今まで見たこともない多角形の造りで、まるで中世の騎士の叙任式のような光景が浮かんだ。その街セゴビアもこのクエンカもなぜこんなに懐かしく心地よく、私を惹きつけるのだろうか。
そして、岩山。岩山の上にクエンカの城塞や街が並ぶ。そこにカテドラルを始めたくさんの教会が建てられ、周囲に連なる岩山も合わせて壮大な風景が生まれる。岩山の聖地には、古い巨石文化も含め、日本でも海外でも出会う度に何か不思議な郷愁を覚える。9歳以降ヨーロッパに憧れ、18歳で郷里を離れ、ヨーロッパと日本をたくさん往復してきた私の人生の中で、「岩山」や「巨石」のモチーフが見え隠れするようになったのはいつからだろう。私の郷里もまた、花崗岩の岩山が川に沿って聳え立つ土地で、「仙岩寺」という岩山に張り付いた小さな寺が、いつもこの町を見下ろしていた。
60歳を過ぎてから、見えてくる景色が随分と変化してきたと感じる。63歳のチャートの折り返し地点にあたる31歳はベルリンにいて娘を出産した。それまでと大きく人生が変わった。折り返し地点を挟んでそれまでの各段階のテーマがいろいろな形でその反対側の時期に現れるというミラーリングは、そのチャートが満たされる年齢にならないと見えてこないかもしれない。63歳でいくつかのテーマを手放し、新たな展開が与えられ、引き続き抱えるリュックとともに、64歳、第10・七年期に踏み出した私の前に、今新たな土地との出会いへの予感が横たわっている。2年後の会議はブラジルだという。今まで関心さえ持たなかったアジアやアメリカ大陸が、私にとって未知の出会いの可能性に輝く。人生の次のステージで現れるかもしれない風景に対して、今までになくオープンでいられる。スペインとの出会いは、無理なら来世でもよい北部の巡礼の旅への憧れをさらに強める。岩や教会がモチーフをつなぐ。12歳の私が小学校の卒業文集に書いた、将来になりたい職業は「旅行家」だった。人生という旅はさらに続いていく・・・。
さて、いったいどこへ?
(vol.30▶樋原 裕子/関東/1期)
※次回は、渡辺 みゃおさん(関東/13期)のリレーコラムです。どうぞお楽しみに。



