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徒然なるままに ─組織と個─

 コロナ禍に翻弄されたこの3年余、混乱と急激な変化の中、さまざま想いを巡らせる貴重な時間となった。ある意味、社会構造の歪みの本質が顕在化した、必然の時期だったとも感じている。

 

 バイオグラフィーワーク(以下BW)に出逢ったのは、私自身の3回目のムーンノウド(56歳)。この木星期を挟む前後・十数年を、神学校という宗教の場、さらにがん拠点病院という医療の場で過ごさせていただいた。現代組織のただ中での経験、大きな恵みの時だったと今、改めて感謝している。

 

 初めてシュタイナー思想に触れたのは、『魂の扉・十二感覚』の本。心理教育の卒論を書く最中だった。キリスト教における組織・個の課題に悩む私に、新たな地平をもたらしてくれるのでは? と微かな希望を感じてもいた。BWの学びの深まりに伴い、テーマは“こころとからだ”に移り、ごく自然な流れで、東洋医学に導かれた。そして、現代医療の臨床の場でも、やはり組織・個の課題に直面することを余儀なくされたのだった。

 ファウンデーション・コースが終わる頃、紹介されたグードルンの著書、“Taking charge(※1)”。「(自分自身の人生の)責任を負う」というそのタイトルに加え、20pに掲載された図に惹きつけられた。その示唆する意味を巡り、緩和ケアの鍼灸師として幾度となく、患者さんと対話した日々を想う。私にとって特に印象的だったのは、2つ。交わる2曲線の始まりと終わり、誕生と死を示す地点で、Spiritual Curveが最も高い位置にあること。さらに、Biological Development Curveの頂点、33歳は、十字架の死と重なる、ということ。イエス・キリストの霊的苦しみがSpiritual Curveの最底辺に示される。

『Taking charge(Gudrun Burkhard著)より


 

 グードルンの提示したこの成長カーブは、個のみでなく、組織の変容をも促す。現在、起こっている社会事象・混乱は、意識魂の時代の分岐点故の必然なのだろう。幸いなことに、コロナ禍以降、組織構造の歪みが顕在化し、見える形になって私たちの前に示されるようになった。組織は、a,b,c, どのカーブを選択するのか、その精神性が今、問われている。

 

 有機体としての人・社会は、螺旋のように成長する存在、とシュタイナーは伝える。『心理的苦悩と意識魂の産みの苦しみ(1916年10月)』、意識魂の現代を生きる私たちに、問いかけるシュタイナーのこのメッセージは、BWに出逢い20年以上経た今も、読み返すと新たな気づきをもたらす。彼のこの提案を真摯に受け留め、歩み続けたいと願う。

 

(vol.21▶佐々木 緋紗/関東/1期

 

※1…Burkhard, Gudrun: Taking charge; Your life patterns and their meaning, Floris Books, Edinburgh, 2002

当初は翻訳本がなく、2006年、1期生の樋原裕子さんが『バイオグラフィー・ワーク入門』として翻訳・出版してくださっている。2022年に新装版を発行。

 

※次回は、江崎 桂子さん(関東/3期)のリレーコラムです。どうぞお楽しみに。