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岸から離れて

 

 私がバイオグラフィーワークを知って良かったなと思うことは、自分の人生を振り返る機会を得たことで、自分自身をより知ることができ、ワークを通じて他者の生き方や考え方に触れ、新たな視点や忘れていた事柄を思い出させてもらえることです。むろん、初めての方に言葉で伝えることには限界があります。でももしもワークを受ける機会があったら、一度はトライしてほしいと思っています。

 

 さて、私は今年63歳になります。7年周期で人生を読み解くバイオグラフィーワークでは第9・七年期にあたり、土星に呼応する最後の1年を迎えています。今回のエッセイは、今までの学びを振り返るよい機会だと思いました。私の拙い絵ですが、この絵は土星の質「深く集中した時」を描いたワンシーンです。私は35歳。人生のターニングポイントとも言える年に、北欧スウェーデンの人智学の拠点であるヤーナで、成人向けの基礎コースに入学しました。そこで私は、オーストリア出身のフリッツと出会い、さまざまなことを一緒にしました。彼は還暦のお祝いに奥様と娘さんから1年の授業料を出してもらい、同じくヤーナで教育学を学ぶ娘さんと二人でストックホルムから通ってきていました。彼は私が最初から困っているのを見て、「僕のやる通りにやればいいよ」といつもそばにいてくれました。ある日の課題で著名人の人生をグループで調べることになり、私は一人で宮沢賢治をやろうと思いました。その時彼が「僕も一緒にやる」と言ってくれ、驚きましたが何とか二人で集中して事を進めました。最後には「雨にも負けず」を彼の奥様の協力でスウェーデン語にし、朗誦することができました。この絵は、発表の前に二人で校内を散策し、練習をしているところです。なぜその課題をやるのか、その時は全く理解できませんでしたが、彼を通じて人智学に対してより興味を持つようになり、その20年後にバイオグラフィーワークを学ぶことになったのも何かの縁だと感じています。

  振り返れば、すべてが今の自分につながっていると実感できます。実は私は幼い頃から生まれ育った田舎が嫌いで、外の世界に憧れていました。そんな私が故郷を離れ、外国に暮らし、さまざまな出会いと別れを経て、再び自分の家族とともにこの故郷で暮らしています。年月を経て思うことは、ここがまさしく自分の居場所だということです。

 バイオグラフィーワークの学びを通して、故郷の土地の豊かさ、そこに住む人々との交流がかけがえのないものだったと気づくことができました。今は祖先や両親により一層感謝し、私から次に大切な何かを手渡す役目をもらったんだと思っています。

 

(vol.18▶鈴木 緒子/東海/9期

 

※次回は、井上美知子さん(関西/3期)のリレーコラムです。どうぞお楽しみに。