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その一歩で動きだす 人生

 私は生まれも育ちも北海道、いわゆる道産子。子育てをするまで、修学旅行以外、道外への旅らしい旅をしたことがなく、知らない土地への憧れは有りながらも遠い存在でした。

 

 そんな私が細々とシュタイナーの勉強会を続ける中、「一度はゲーテアヌムへ」という気持ちが湧いてきました。下の子が小学校に入り、パートで得たお金で子どもの世話の環境を整え、念願のドイツ・スイス、そしてゲーテアヌムへの旅が叶いました。しかしそれ以後は、また15年くらいほぼ北海道内のみで子育ての日々。勉強会も外部からの講師を北海道にお迎えしながらの活動でした。

 

 ある時、仲間の医師がアントロポゾフィー医学を基にした健康相談の会を開きました。その中でバイオグラフィーワークの大切さを伝えてくれ、私にそのワーカーへのチャンスを投げかけてくれたのです。そして、2010年49歳の時、子育ても一段落していた私は、バイオグラフィーワーカー養成の研修に参加するようになりました。

 

 それまで井の中の蛙だった私は、バイオグラフィーワークの研修を受けるため、道外へ飛行機で行き来することが多くなりました。次の年にはイギリスで行われたバイオグラフィーワーカーの世界会議にひとり旅立ったり、同年末には思いたって息子2人と一緒にハワイのホノルルマラソンに参加したり。後で考えてみると、ハワイ行きは子離れ(子育て卒業?!)に向かう一歩だったかもしれません。

 2012年オイリュトミーの誕生100年祭で横浜・福岡・名古屋をめぐった時には、毎度その周辺のぶらり気ままな旅も楽しめるようになりました。「あの頃、なぜ旅に出なかったんだろう?」─振り返ると対極には広い世界に出られなかった若い頃の私が居て、今になってやり残した旅の回収をしているかのようです。


 

 突然、驚くほど移動しだした私の人生…。「水星の質が関わってきているのね」と言われ、7つの惑星の質との関わりにより興味を持つようになりました。ワークを通してこうした日々のひとコマの中に潜む大きく深い背景を知り、今なお研修や仲間から多くを学んでいます。

 

 私は最近、ある予感を感じました。「予感は浄化された感情であり、未来を予知する能力を持っている」と本で読んだことがあります。それを正しく受け取ることのできる器を創るためにも、ワークや日々の研鑽を通して静寂を持ち、自らを研ぎ澄ますことができれば、と思っています。

 

(vol.10▶上田 千惠/北海道/6期

 

※次回は、原和子さん(東海/3期)のリレーコラムです。どうぞお楽しみに。