まだまだ寒さが厳しかった2月の上旬、バイオグラフィー関係の方から一枚のおみくじハガキというものが届きました。私のことを思いながら引いてくださったそうです。それを見た瞬間とても不思議な気持ちに襲われました。そこに書かれていた工藤直子さんの詩「花」は、2012年に福岡での第5期の養成コースが終了し、初めて行ったバイオグラフィーワークで私がテーマとして掲げていたものだったからです。
世界は自分に冷たいと自分の人生から出て行きたいと感じていた日々、否応なく渦の中に巻き込まれて足掻いていた日々、バイオグラフィーワークを学ぶ中でそんな日々こそが今の自分を作ってくれているのだと感じられるようになっていました。そこで、ワーク参加者の皆さんもかけがえのないそれぞれの人生に花を植えてほしい。自分自身もバイオグラフィーワークを通じて花を植え続けていこうという決意を込めて、この詩を選んだのでした。
それから、10年たって再びこの詩が私の人生にやって来ました。バイオグラフィーワークをやっていると、このように一つの円環が閉じて何かが動き始めるというような体験がたびたび起こります。ただ10年前とは違って、確かに自分の人生から出て行くことはできないけど、私の人生には人がたくさん花を植えてくれているな、と感じている自分がいます。いったいこの詩は今の私に何をもたらそうとしているのでしょうか?
今年の春は、つらつらとそんなことを考えながら愛犬モクとたくさん散歩をしました。モクと歩きながら、田んぼのあぜ道に咲く花々や空の高いところでさえずっているヒバリの声を楽しんでいるのですが、そんな中で色々な発見をすることも自分の人生を豊かにする一つだと感じます。「花は咲くべき時が来たらちゃんと咲くなあ」と尊敬の念を抱いていたのですが、晩秋にレンゲが咲いていたり春にアスファルトの隙間からコスモスが咲いていたり、「植物もけっこう季節を間違えるんだな」というのが最近の発見です。それが温暖化の影響なのか、今まで自分が気が付かなかっただけなのかは定かではありませんが…。
散歩コースの最後は近所の神社、手を合わせながら「自分が小さくても何か世界に対して良いことが成せますように」と祈る日々です。
(vol.9▶八尋 恵美/九州/3期)
※次回は、上田千惠さん(北海道/6期)のリレーコラムです。どうぞお楽しみに。