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わたしとバイオグラフィーワーク

 たしがバイオグラフィーワークに出遇ったのは、42歳の時。「人生、このままでいいのか?」「わたしがやりたいことは何なのか?」と思い迷っていた時に参加した、単発のワークがきっかけだった。

 その時のワークのお題は「28-35歳にかけて構築したもの」。28歳で独立し、フリーランスとして仕事をしてきたわたしにとっては、まさにアーキタイプぴったりで、「ああ、そうだったのか」と腑に落ちた日の感動を今でもはっきりと覚えている。

 ワークと出遇ってちょうど木星周期、12年が過ぎた。小学生の頃は図画工作がとにかく苦手で、絵を描くのがイヤでたまらなかったわたしが、ワークの度に絵を描いている不思議。記憶の底に沈んでいたシーンが、最近になってようやく描けたこともあった。今は認知症を患う父と、幼い頃に夏の海辺でつくった砂の城。母が口ずさんでいたお手玉歌。未だに絵は上手ではないけれど、それでも描いたその場面が、何だかとても愛おしく思えて仕方なくなった。ワークを繰り返す中で、家族との間にあったわだかまりのような思い出が、「あれ、そんなことあったっけ?なかった気がする…」と思えるほどに昇華されていったのだ。

 もちろんこれは個人的な感想であって、誰もが同じように感じるとは限らない。けれどわたしにとっては、このワークをライフワークとして積み重ねていくことが、確かに生きる力を支えてくれていることに間違いはない。出遇えてよかった、なんて往年の恋人につぶやくような気分なのである。

(vol.1▶重岡美千代/九州/5期

 

※次回は、今村温さん(関東/6期)のリレーコラムです。お楽しみに。